北澤 繁太さんのレビュー

ルポ トランプ王国――もう一つのアメリカを行く (岩波新書)
金成 隆一 (金成 隆一) 評価5.0 点 平均(5.0)
  • 出版日:2017-02-04
  • 種類:新書
  • ISBN:4004316448
読書タグ: ミドルクラス  アメリカ  トランプ 

評価5.0 点 (5.0)

投稿日 2017-02-09 06:26:23

【もう一つのアメリカ人の姿。】

足で稼がないと見ることができない、もう一つのアメリカの姿。そこには「エスタブリッシュメント(既得権層)」の視界には入ってこないであろう、低所得層への転落という不安や悩みを抱えるミドルクラスの姿がある。

なぜ、暴言を吐き続けるトランプが支持を得ることができたのか。なぜ、トランプが第四十五代アメリカ大統領に選ばれたのか。なぜ、大統領選直後に都市部でデモが多発したのか。それらの一端を垣間見せてくれる一冊。

おそらく我々が新聞紙面やテレビニュースで目にする多くは本書に書かれているのとは別の、もっとはっきり言えば反対側の一面だろう。まさかトランプが選ばれるとは思わなかった。しかし、それを望む人々がいたのだ。

「トランプの暴言を支持する若者に私は一度も出会ったことはない。ただ彼らに共通するのは、「規格外の行動力を持った指導者に現状を変えて欲しい」という願望だ。」

市井の人々の怒りが爆発したのだ。政治を職業とする人間はもう真っ平ごめんだ。職業政治家は庶民よりも業界の利益を優先する。ペンタゴンにはとめどなく金が流れるのに、インフラ整備には資金が回らない現状がある。

「政治家にも、レーサーのような、スポンサーのロゴ入りスーツを着用させるというアイデアはどうだろうか? 一目で、あいつは製薬業界の代弁者、こいつは軍需産業の代弁者とわかるだろ?」

トランプにも問題はある。人種差別的発言に始まりアメリカ・ファースト(米国第一主義)の名のもと自由貿易や移民を攻撃する姿勢まで。では、正反対にあるかのように見えるエスタブリッシュメントが良いのだろうか。

人種差別的発言は控え、自由貿易を標榜して、移民受け入れには前向き、アメリカはアメリカのためのあめりかではなく、世界のためのアメリカ、職業政治家にとっては良い響きかもしれないが、それは庶民に響くのか!?

答えは出された。既定路線に否を唱えたミドルクラス。トランプは失われたアメリカン・ドリームを取り戻せるのか。ここには「一握り」のアメリカ人にはわからない、もう一つのアメリカ人の姿が生々しく描かれている。

矢継ぎ早に繰り出される大統領令。行き過ぎたものもある。いつか叩かれ、落とし穴にはまるかもしれない。しかしながら、トランプが変革するアメリカの未来は気になる。不安や悩みを抱えるミドルクラスの一員として。

北澤 繁太さんの読書タグ: ミドルクラス  トランプ  アメリカ 

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