ゆうちゃんさんのレビュー

シャーロック・ホームズのジャーナル (創元推理文庫)
ジューン トムスン (ジューン トムスン) 評価3.0 点 平均(3.0)
  • 出版日:1996-10-01
  • 種類:文庫
  • ISBN:4488272037
読書タグ: パスティーシュ  ミステリー 

評価3.0 点 (3.0)

投稿日 2017-04-21 22:20:31

ジューン・トムソンが出版代理人、オーブリー・B・ワトソンと言う歯科医が、巡り巡ってコックス銀行の地下に保管されていたワトソンの手になる「ホームズの事件簿」の写しを入手して発表する、と言う短編集の第3弾。脅迫された百万長者(脅迫と強盗)、ウォーバトン大佐の狂気(恐喝)、アドルトンの悲劇(殺人)、エイブラハムズ老人の恐怖(窃盗)、フリースランド号事件(誘拐)、スミス-モーティマーの相続(殺人と横領未遂)、モウペルトイスの醜聞(詐欺)の7編から成る。全て原作の語られざる事件である。
必ずしも本格推理に拘った短編集ではないと思うが、第3弾となるとそろそろ筆の疲れが見えてくるのか、事件解明の部分で、あれこれ辻褄合わせをしている様にしか思えなく作品も幾つかある。
第2弾の最後の作品(スマトラの大鼠)でワトソンの思い付きが事件解明の大きなヒントになっていたが、この作品集ではワトソンの活躍が思いつきにとどまらず、観察者としてクローズアップされる事件がある(モウペルトイスの醜聞)。また、ドイルの原作でワトソンとホームズが別々に捜査する作品がある(怪しき自転車乗り、フランシス・カーファクス姫の失踪)。この短編集では、原作でふたりが別行動を取った裏話になっている作品が2編ある(脅迫された百万長者とエイブラハムズ老人の恐怖)。作者がこの様に本作でワトソンを押し出したのが、意図なのか、偶然なのかはわからない。

この短編集でのホームズらしさは、容疑者の遺留品から年齢や職業、所作を推理する(脅迫された百万長者やスミス-モーティマーの相続)、第1弾(秘密ファイル)以来、久々にヴァイオリンを弾く(アドルトンの悲劇)、ホームズが変装してワトソンをからかう(エイブラハムズ老人の恐怖)など。原作の「恐喝王ミルヴァートン」と同じ様に、違法行為をするホームズにワトソンがどうしても手を貸すと言ってきかない場面がある。「ミルヴァートン」とほぼ同じセリフが続くのにホームズもワトソンもこの事件を思い出さないのが、ちょっと不思議だ。後述のトムスンが著した原典研究作を当たると、そこで述べられている事件発生年代の推定では、ミルヴァートン事件は、この事件のずっと後(ほぼ10年以上後)とされているため、そもそも思い出すことが出来ないので辻褄が合う。
帯にある通り、スミス-モーティマーの相続が一推しの作品。アリバイ作りのトリックが、本当に人を騙せるのか、また、ホームズの言う証拠が、ちょっと弱い感じがするのが、少々疑問な点だが、懐かしい古典的な推理小説の味わいがあり、葉巻の吸い殻、犯人の推定の根拠とホームズの推理が冴える。
巻末には、この写しを作成したシャーロッキアン、ジョン・F・ワトソン哲学博士のワトソンの2番目の夫人(クイーン・アンで開業していた頃の夫人)に関する考察が掲載されている。彼女は3番目の夫人だ、と言う説もあるが、第2弾の短編集の巻末の考察の通り、ジョン・F・ワトソン哲学博士は、ワトソン博士は四つの署名の依頼人メアリー・モーンスタンと結婚し、彼女の死後1度だけ再婚したと言う立場。手掛かりに乏しい2番目の夫人だが、ドイルの原典からこの人ではないか、と言う推理をしている。これら「ジョン・F・ワトソン哲学博士」の考察は、後にジューン・トムソンの著作「友情の研究」に結実する。

ゆうちゃんさんの読書タグ: パスティーシュ  ミステリー 

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